「完全栄養食品」と呼ばれるたまごは、ひよこ1羽がしっかり育つように、良質なたんぱく質や脂質、ビタミン、ミネラルなどたくさんの栄養素が詰まっています。
ごはんや野菜、お肉との相性が良いたまご。色んな食材と組み合わせてバランスよく、おいしく、栄養がとれます。
でもたまごってコレステロールが高くないですか?だから1日1個以上食べると体に悪いよね?なんて声が聞こえてきそうなので、山田先生にたまごについて聞いてみました。
コレステロールと聞くと、太る・・?血液がドロドロに・・・?など「コレステロール=カラダに悪い」というイメージがあるかもしれませんが、これは大きな誤解です。なぜなら、コレステロールには次のような大切な役割があります。
☆私たちの体を構成する細胞膜のもとになります。
☆食事で摂った脂肪の消化と吸収をたすける胆汁酸の成分となり、ビタミンA、D、E、Kなどの脂溶性ビタミンの吸収に役立ちます。
☆糖質、脂質、タンパク質等の栄養素の代謝、また電解質の調整を行うホルモンのもとになります。
そう、コレステロールはカラダにとって無くてはならないものです!
そして必要であるからこそ、カラダの中(肝臓)では毎日コレステロールが作られています。肝臓で生産されるコレステロールと食事から産生するコレステロールの割合は8:2程度であり体内に存在するコレステロールのほとんどは自ら作りだしたものなのです。
また健康な人であれば肝臓では食事から摂ったコレステロールの量に応じて、体内で作るコレステロールの量を調整してくれています。なお、血中コレステロール値が高い理由には、遺伝による体質、さらには糖尿病や高血圧、加齢、喫煙などが関わっているとされています。
ずばり、『脳』は全身で最も多くコレステロールが存在する臓器です。そのため、あまりにもコレステロールが低いと脳出血など、脳にも支障をきたす可能性があると言われています。このように、近年では世界中でコレステロールについての研究が進み、特に低栄養の人(寝たきりの方など)では「コレステロール値が低いと危険」という、これまでの認識を覆す報告がいくつも発表されています。
体内コレステロールにはLDLコレステロールとHDLコレステロールがあります。
これはコレステロールそのものの違いではなく、コレステロールを運んでいるLDLとHDLという運び屋さんの違いによるものです。
LDLは肝臓で生成されたコレステロールを全身に運び、それぞれの組織に必要なコレステロールを供給しています。しかし、このLDLコレステロールが多すぎると、組織だけではなく血管の中にまでコレステロールを押し付けてしまい、動脈硬化症をおこすとされています。反対に、HDLは血管にこびりついたコレステロールを肝臓に運び、コレステロールの代謝を促しています。つまり、動脈硬化症の予防因子になるとされています。
つまり、本来は、どちらも私たちのカラダには必要なものなのです。しかし、LDLコレステロールが増えすぎて血管に沈着すると、動脈硬化を発症することになります。このサイクルを保つためにも、LDLコレステロールもHDLコレステロールもその濃度がとても大切なのです。
LDLコレステロールは一般には140mg/dl以上で高LDLコレステロール血症とされ、HDLコレステロールは40mg/dl未満で低HDLコレステロール血症とされます。ぜひ、ご自身の健康診断のデータをご確認ください。
コレステロールを気にして、以前は医師や研究者からも悪者扱いを受けてきたたまご。
最近の様々な研究成果から、汚名は返上されています。
その理由は、たまごなどの食品中のコレステロール量が、そのまま血液中のコレステロール値に反映されるわけではないことにあります。
さらに疫学調査によっては、明らかに食事中コレステロールが、心臓病などのリスクの増加に関係しないというデータも複数出ています。
例えば、中国の華中科技大学同済医学院とハーバード大学の研究者らは、1966〜2012年に報告(計26万3938人にも及ぶ対象者)された、たまごの摂取と心血管疾患に関する論文17報を網羅的に解析しました。その結果、たまご一日1個までの摂取と冠状動脈性心臓病や脳卒中のリスクに関連は見られませんでした。
そして、かつては米国でも、コレステロールは一日300mg以下の摂取制限が推奨されてきましたが、2015-2020年版「アメリカ人のための食生活指針」で撤廃されました。
さらに2015年、東フィンランド大学の研究者らが、42〜60歳の男性2332人を約19年間追跡調査した結果は、一週間にたまごを約4個食べた男性は、約1個食べた男性よりも2型糖尿病のリスクが37%も低くなりました。たまごを控えていたことが馬鹿らしく思えるようなデータですね。
ただし、ごく一部の人では、たまごを食べても肝臓のコレステロール合成や消化管でのコレステロール吸収の抑制が生じにくいこともわかっています。
逆にたまごを食べると血中コレステロール濃度が上昇してしまう特異体質の人でさえなければ、通常、たまごを食べてもコレステロール濃度は上昇しないとご理解ください。
たまごは、100gあたり糖質0.3gのロカボ食品です。
ロカボとは、「適正な糖質摂取」のことで、Low(ロウ:低い)Carbohydrate(カーボハイドレート:糖質)で、「おいしく楽しく適正糖質」を目標にしています。
糖質は三大栄養素の「炭水化物」に含まれていて、血糖値を上げる原因になっています。適正な糖質摂取を心がけることで血糖上昇を抑えることができます。
毎食20~40g 、間食10g以下、1日70-130gに、糖質を抑えるだけ!
これ以外のカロリー・脂質・たんぱく質などに制限はありません!
このロカボという食事法のためには、たまごの摂取はうってつけです。
なぜなら卵は100g中の糖質量が0.3gと低糖質でありながら、タンパク質12.3g、脂質10.3g、エネルギー151kcalとしっかりと他の栄養素を含んでいるのです。エネルギー摂取が多いと太りやすくなるのではないかと勘違いをしている人もいますが、エネルギー摂取が多くても、タンパク質や脂質をたくさん摂取している場合には、満腹感を維持しやすく、エネルギー消費を高めやすくなるというデータがあります。ですから、ロカボは満腹になって肥満を解消でき、かつ筋肉をつけたり維持したりするのに有用であるとご理解いただけるのではないでしょうか。たまごはまさにこうしたロカボの効果を最大限発揮するのに有用な食材と言えます。
たまごのたんぱく質はアミノ酸20種類から構成されており、その中でも体内で作ることができない必須アミノ酸9種類全てを含むというのだからとっても優秀なのです♪
さらに、カラダの中で悪さをする活性酸素を除去するグルタチオンという特殊な働きをするトリペプチド(アミノ酸が3つ結合した化合物)も含まれています。
動脈硬化はコレステロールそのものではなく、活性酸素によって酸化されたLDLコレステロールが血管に沈着することが原因で発症するとも言われています。よって、動脈硬化の予防には活性酸素をできるだけ増やさないことがとても大切です。
前述していますが、文部科学省によると、新鮮な生たまご1個(50g)は76kcal、タンパク質6.2g、脂質5.2g(飽和脂肪酸1.4g、不飽和脂肪酸2.7g)、コレステロール210mg、炭水化物0.2gを含みます。たまごは、健康によいとされる脂質やビタミン(D、A、B2、B12、葉酸など)、ミネラル(カルシウムや鉄など)も含むなことから、「完全栄養食品」とも言われるくらいです。
是非、一日1個、あるいは一食1個、たまごを食べて健康な体とライフスタイルを獲得しましょう!
ただし、高LDLコレステロール血症の方の中には、コレステロール吸収能力や合成能力が高い人もいるとされています。個々のたまごの適量については主治医の先生とご相談下さい。
中国の華中科技大学同済医学院とハーバード大学の研究者らの論文を参考に、たまごを1日1個食べても、心臓病や脳卒中のリスクになっていないことをお話しました。
さらに2018年5月、中国の北京大学健康科学センターと英国のオックスフォード大学の研究者らは、心臓の専門誌「Heart」に興味深い結果を報告しました。
研究者らは、中国の異なる10の地域に住む、がん、心臓病や糖尿病の既往のない成人約46万人(30~79歳)を対象に、約9年間にわたり、たまごの摂取と心臓病や脳卒中の関係を調査しました。
結果、対象者の13%はたまごを1日約1個食べて、9%はたまごを全く食べないあるいは希にしか食べていませんでした。毎日たまごを食べる人は、食べない人に比べて、出血性脳卒中のリスクが26%低く、その死亡リスクは28%低くなりました。また、心血管疾患による死亡リスクが18%低くなりました
つまり、毎日たまごを1個ほど食べる人は、全くたまごを食べない人よりも心臓病や脳卒中のリスクが低いことが示されました。
ただし、この研究では、1日に複数のたまごを食べる参加者がおらず、1日1個以上のたまごを食べた場合と心臓病や脳卒中の関係リスクは評価できていません。
2020年になって報告されたハーバード大学からの報告でも、アジア人では卵の摂取が1個増えるごとに心臓病や脳卒中が8%ずつ低下するという解析結果になっていました。卵の摂取過剰を心配するのはまさに杞憂ですね。
様々な研究データがたまごの食べ過ぎによる動脈硬化症の懸念は不要であることを示しています。そして、たまごはロカボの大いなる味方。ぜひ積極的に摂取して健康になりましょう!!