鶏卵相場 全国で260円台に
HPAI発生で需給ひっ迫
今年後半の鶏卵相場(全農M基準)は、配合飼料や燃料、電力など諸生産コストの歴史的高騰や、西日本での災害による需給ひっ迫などを背景に、盆明けから上昇に転じ、9月(東京・月間平均)は前年同月を10円上回る223円、10月(同)も3回(4日、13日、25日)の上伸を経て前年同月比26円高の239円となった。ただし、上昇した生産コストをまかなえる水準には至っていない。
10月下旬以降は、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の被害が拡大。年末の需要期を控えた11月7日までに西日本で合計約72万羽、東日本で約104万羽が処分されることとなり、2日に東京・大阪・名古屋で5円、7日に東京・名古屋で10円上伸。8日にも大阪・福岡で10円上昇し、東京・名古屋は260円、大阪・福岡は265円となっている。
特に東日本では、茨城県のAI発生農場から半径3㌔㍍の移動制限区域内の2農場で約100万羽が飼養されており、同区域内の卵の出荷制限が発生日から3日以上解除されなかったことが、関東のテーブルエッグの需給ひっ迫につながった。
7日時点の東京相場の水準は、前年同期比で55円高。おう盛な外食・加工需要が続いて「爆買い」も流行語となった2015年の同期比では10円高。夏の猛暑による生産減とコンビニ需要の増加で年末需給がひっ迫し、止め市に280円をつけた2013年の同期比でも25円高と、近年では最も高い水準となっている。
今後の相場展開については、西日本でひっ迫傾向が続いていたことに加え、11月に入ってHPAIの被害が拡大し、東西で供給が不足していることから、今年の止め市は2013年につけた280円を超えるとの見方も出てきている。ただし、川下の小売りや食品メーカーなどでは、既に1年近くにわたり様々な商品の値上げが進められてきたものの、依然、激しい市場競争下でコスト上昇分が十分に転嫁されておらず、300円を超えるような相場では、需要が減退してくるとみる関係者も多い。
相場展開は、今後のHPAIの発生動向にも大きく左右されるが、末端への価格転嫁が欧米のように進まないことが、大きな課題となっている。