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【無断転載禁止】鶏鳴新聞2021年6月25日号  採卵鶏AW基準案は不採択 OIE総会

鳥インフルエンザ章の改正案は採択

国際獣疫事務局(OIE)は5月24日から28日まで、オンラインで第88回総会を開いた。新型コロナウイルスの影響で昨年は開催されなかったことから、100以上の決議案や基準案を審議。本紙関係では、低病原性鳥インフルエンザ(LPAI)を基本的にリスト疾病から除外する陸生動物コード第10.4章「鳥インフルエンザ感染症」の改正案が採択されたが、第7章に「アニマルウェルフェアと採卵鶏生産システム」の新章を追加する案は、EUと南米から相反する意見が出され、賛成票が既定された投票数の3分の2に達しなかったため採択されなかった。

総会では「鳥インフルエンザウイルス感染症」改正案については、スウェーデンや中国、日本、ジョージアの代表が意見を述べた。スウェーデンはEUとして賛成するとし、日本の代表もアジア太平洋地域の32か国の代表として同章の採択を支持するが、変異の認められたLPAIについては加盟国による適時の通報と加盟国間の情報共有を促すようOIEに求める意見を述べた。採決では反対・棄権ともなく改正案が採択された。

同章の見直しは2017年に始まり、加盟国の意見を取り入れながら修正し、今年2月に五次案を提示。章の名称を「高病原性鳥インフルエンザ感染症(INFECTION WITH HIGH PATHOGENICITY AVIAN INFLUENZA VIRUSES)」とすることでLPAIは人に重大な影響を及ぼす一部の株を除きリスト疾病から外れ、規定上は加盟国の通報・定期報告の義務対象や国際貿易上の要件からも外れる。ただし、家きんのLPAIのモニタリングは継続し、病原性の変化がある場合、新興感染症として引き続き通報対象とする。また、家きんの定義から「自家消費用の家きん」を除外した。

「アニマルウェルフェアと採卵鶏生産システム」の新章追加案については、これまで六次案まで修正が重ねられ、すべての加盟国が対応できる内容として整理されてきたもの。コード委員会議長のエティエン・ボンボン博士(フランス)は審議前に、最新の科学的知見や世界の様々な飼養形態を考慮したことや、本章は法規制ではなく加盟国への推奨であることを説明した。ただ、同日の採決前には、10か国以上の代表が意見を陳述。

アイルランドはEUを代表して本案に反対するとし、砂浴び場やついばみ場、ネスト、止まり木などの設置が「望ましい(is desirable)」との表記を二次案の「設置すべき(Should be provided)」に戻すべきと述べた一方、英国は継続的見直しを前提に賛成、カナダも賛成、セネガルはアフリカを代表して賛成と述べた。

米国はすべての飼養システムで導入可能なことを示唆している本案を支持するが、より世界的に適用可能になるよう、ネストや止まり木の設置について「もし(If)」との単語を使って微修正することなどを提案。

チリは本案でも農家が生産方式の転換を迫られる可能性があり、多大な経済的負担が生じることから引き続き検討が必要と主張。メキシコは「飼養方法が限られすぎている。本章は野生で生きていけない人の世話が必要な動物のためにあるもので、より議論を深めることで、別の選択肢も可能な飼養管理基準を」と反対。コロンビアは「国ごとに様々に異なる環境や生産方法を考慮しなければならない」、国際鶏卵委員会(IEC)のスレシュ・チットゥリ会長(インド)は「世界には200万人の養鶏農家がいて、人々の食や生活を支えている。世界の多くの貧しい国でも対応できる基準を」と訴え、インドのOIE代表も、米国やIEC会長が言及したように世界のあらゆる国で適用できる基準となるよう、ネストや止まり木の表現について微修正を求めた。

アルゼンチンはチリ、メキシコ、IECの意見に賛同するとし、米大陸で使用されている様々な飼養システムについて考慮すべきと述べ、同国には望ましい飼養方法とそうでない飼養方法の区別はないため、米国が提案したような微修正が求められるとした。グアテマラもチリ、メキシコ、アルゼンチン、IECの意見に賛同するとし、さらに審議が必要と述べた。

ボンボン議長は同案の採決前に「本案が最も各国のコンセンサスに近いと考えている」と強調したが、25日の投票では参加した142か国のうちEUの約20か国と、主に中南米の約20か国が反対し、9か国が棄権を表明。可決・採択に必要な「投票数の3分の2の賛成票」のラインに非常に近くなったことから、事前の取り決めに従って、より正確な電子投票を28日に行なったが、賛成が投票数の3分の2に達しなかったため採択されなかった。本章は引き続き草案として検討されることが見込まれるが、OIEによる正式な結果発表や説明は6月中旬時点では出ておらず、今後の対応が注目される。

鶏鳴新聞

鶏鳴新聞
2021年6月28日

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