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【無断転載禁止】鶏鳴新聞2024年1月5日号   2024年鶏肉産業の課題と対応

需要環境に応じた供給体制の構築へ

JA全農たまご㈱
代表取締役社長
河上 雄二

 あけましておめでとうございます。鶏卵業界関係者の皆様に、謹んで新年のごあいさつを申し上げます。旧年中は、全国のお取引先様や関係各位に多大なるご協力を賜りましたこと、あらためて厚くお礼申し上げます。
 令和5年は先行き不透明な環境下で、前半と後半とでは需給状況が一変するという、まさに激動の一年となりました。
 令和4年10月から発生した高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)が、類を見ない感染拡大により猛威を振るい、採卵鶏の殺処分羽数は過去最多の約1654万羽に上り、鶏卵のサプライチェーンに甚大な影響を及ぼしました。
 そのような中、令和5年の相場展開も、前半と後半とでは様変わりしました。初市相場は、相次いで発生したHPAIにより生産量が急減し、年末年始の滞貨玉は低位の在庫水準で推移した状況もあり、東京Mサイズ基準値は1キログラム当たり260円と、前年より120円高い値でスタートしました。年初から5月頃までは、ひっ迫状況からやむなく供給制限が相次ぎ、特に業務・外食筋、加工筋においては、たまごメニューの休止や休売、原料としての量目変更等を余儀なくされ、連日メディアで卵関連の報道を目にしたことは、記憶に新しいところです。
 相場は3月下旬に、350円まで上昇し、6月下旬まで同水準で推移しました。春以降、HPAIからの生産回復が徐々に進み、6月末までに累計400万羽が再導入されたほか、一部では供給を優先すべく飼養期間を延長し、生産を補完する動きもみられました。この時点ではHPAI発生以前のような供給体制に戻っておらず、地域によって需給は横ばい、あるいは不足の状態が続くものと思われました。
 ところが、7月頃から気温上昇による不需要期に入ったことに加え、HPAIからの段階的な生産回復が進んできたことや、殻付卵の輸入量拡大によって市中在庫は増加し、相場は8月上旬に280円まで下降しました。
 9月には秋の需要期となり、ファストフードの「月見」プロモーションもあって、中旬に295円まで持ち直しましたが、10月以降は暑さが和らぎ、産卵率、個卵重も回復し、出回り量が増加する一方で、加工筋の需要回復の遅れは顕著となり、想定より早く需要を供給が上回る供給超過状況に陥り、12月5日現在では250円まで下降しています。
 令和4年の鶏卵生産量は、約260万トンでしたが、令和5年の生産量は当社では240~245万トンと予測しています。現在、加工需要を中心に荷余り感は強く、年間に直すと、まさにこの数値差の消費が削ぎ落とされてしまったと考えています。過去最多のHPAI発生による影響が尾を引き、需要を大きくシュリンクさせてしまったという点でも、業界が深い傷を負う一年であったと言えます。
 今後について、生産に関わるコスト面では、飼料をはじめとするあらゆる原料、資材、エネルギー等は高止まりし、元のコスト水準に戻る気配はありません。むしろ、物流のいわゆる2024年問題を背景とした物流費の上昇等、さらなるコスト上昇を見込むほうが当然であると考えられる状況です。
 令和5年は、価格が上昇する中でコスト転嫁も一定程度進みましたが、荷余り感が増すにつれて、売価は下落傾向となり、結局は「元の木阿弥」で生産、流通、加工のどの段階においても利益を得られない業界に戻ってしまうのではないかと心配でなりません。
 今後も、加工筋の需要回復には時間がかかるとみられる一方、HPAIからの生産回復は今春まで継続する見通しの中、このままでは深刻な需給失調が続くことが予見されます。
 飼料代金等のコストを賄える再生産可能な相場水準を創出するためには、早期に減産へ舵を切るしか方法はなく、需給バランスを保つための唯一の方法は、生産の蛇口を締めて流通量を抑制するしかありません。過去の増羽による需給失調ではなく、その性格は異なりますが、生産者の皆様には自社の販売状況に合わせた生産調整を、早期に実施されることを望むものであります。
 再び、260万トンの消費構造に戻すには、安定した供給と「良質なたんぱく源」である鶏卵の魅力ある価値を、幅広く発信し続けていくことが大切であるとも考えています。
 当社は日本養鶏協会様、日本卵業協会様、キユーピー㈱様とともに「たまご知識普及会議」を立ち上げ、各団体と連携しながら、鶏卵の消費拡大・普及活動に取り組んでおります。令和5年も〝1日2個以上〟のたまごを食することを目標とした「たまニコチャレンジ」を社内だけでなく、同意いただいた33社とともに実施しました。今年度は、業界ポータルサイト情報発信や、業界内情報の共有にも取り組み、情報インフラの構築も目指しています。
 即効性はありませんが、地道な活動が消費回復の一歩であり、国内鶏卵産業の足腰の強い体制構築に向けて、業界一丸となって、諸課題に取り組む年であると考え、新年のごあいさつとさせていただきます。(東京都新宿区中落合2-7-1)

鶏鳴新聞

鶏鳴新聞
2024年1月12日

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