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【無断転載禁止】鶏鳴新聞2024年2月5日号   全鶏会議が12月セミナー 飼料動向、HPAI、鶏卵需給テーマに

 全国養鶏経営者会議(略称・全鶏会議)は12月19日、東京都港区のAP新橋の実会場とオンラインのハイブリッド方式で令和5年度12月セミナーを開いた。
 冒頭あいさつした宮澤哲雄会長は「世界情勢をみると、戦禍は収束するどころか、むしろ拡大していると言ってよいと思う。資源や穀物は高止まり、業務用を中心に卵の消費は低迷したまま、12月でありながら鶏卵相場は下がる中、金利は上昇基調にある。高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生時期を迎え、国内でも数件発生しているし、海外を見渡せば数十件発生し、数百万の鶏が殺処分されている。
 このような様々な問題を解決すべく、本日は齋藤副会長、林監事、志渡監事にセミナーを企画していただいた。終了後には忘年会も控えているため、情報交換もしっかりやっていただきたい。
 最後になぞかけをひとつ。HPAIの季節ということで、防疫体制の確立とかけて、スラム街での駐車と解く。その心はどちらも〝記録(キーロック)〟が欠かせません」などと述べた。
 「四半期コーン相場見通し」と題して講演した兼松㈱穀物飼料部穀物課の高橋千明氏は、トウモロコシのシカゴ相場の上昇材料として①原油主要国の年内の原油減産協調②不安定なブラジルの天候(乾燥)③過多な投機筋のショート(売り)ポジション④採算理論値を割る農家販売価格、下落材料として①改善の見通しが立たないパナマ運河(水位低下)②中国の不動産不況の長期化③他産地の豊作期待――などを挙げ、1~3月は470~510セントで推移するとの見通しを示し、「米国のトウモロコシ農家の生産コストは、5年前に比べて約1.4倍になっている。5ドル水準が採算分岐点のため、シカゴ相場は下がりにくいと予想する」などと述べた。
 ㈱ゼンケイの岡村こゆみ営業部課長は、1~3月期の配合飼料価格動向などについて説明した。
 「養鶏現場の獣医師が考える高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)2023年~2024年シーズンへの提言」と題して講演した㈱ピーピーキューシーの白田一敏社長(獣医学博士/獣医師)は、HPAI発生事例のうち農場周辺に水辺がある事例、農場周辺に水辺がない事例、養鶏場が密集する地域や近隣で発生があった事例、防疫対策の不備がる事例を紹介し、「地域で初発事例を作らないことが大事である。1件出てしまうと他での発生リスクが高まるため、自分のところだけでなく、地域全体で頑張って1件も出さないような努力をする。渡り鳥に注意したり、水場や堆肥場に近い鶏舎は要注意である。ウインドレス鶏舎ではモニターの金網の破れやカラスの侵入、入気口付近のカラスの糞などもケアする。管理ミスが起こると鶏にストレスがかかり、少ないウイルス量でも感染が成立する可能性がある。
 地域で出てしまった場合は、ウイルス濃度が高くて発生しやすい条件下にあるため、羽や埃などの飛散や、風向きが大事になってくると思う」となどと述べ、次の5点を提言した。
 ①渡り鳥がウイルスを運んでくる以上、ため池や湖沼、河川、海辺等の水場に近いことは、一番大きなリスクと考えるべきである。用水路も要注意である。必要に応じて水場周辺の消毒等を行なう。養鶏場の敷地のうち水場に近いエリアから消毒するなどの優先順位をつける。
 ②ウイルスを鶏舎に入れない対策を強化する必要がある。舎内専用の履物を用意する。手指を消毒する。ネズミ対策を徹底することは、ネズミをエサとする野生動物対策に通じる。塵埃や羽毛にウイルスが付着している危険性を考慮する。上空(屋根)も含めたカラス対策も重要である。
 ③養鶏密集地帯でHPAIが発生した場合は、初発事例の防疫作業を可及的速やかに実施することが重要である。
 ④自分の経営する養鶏場が養鶏密集地域に立地する場合、あらゆる面でリスクが高いことを認識する必要がある。地域全体での防疫体制の構築が望ましい。
 ⑤鶏を飼育する上で給餌・給水・換気・点灯・舎内温度等の一般的な管理でミスをせず、健康を保つことが基本である。他の疾病にも注意する。
 「鶏卵の需給動向と今後の見通しについて」と題して講演したJA全農たまご㈱東日本営業本部第1営業部鶏卵課の中田純司課長は「鶏卵相場は需要と供給のバランスで成り立っている」とし、供給面では鶏卵生産量の推移、国内地域別人口・採卵鶏飼養羽数・HPAI被害状況、配合飼料価格の推移、採卵鶏のえ付け羽数、需要面では家計消費量、外食産業動向、インバウンド、殻付卵輸出のデータを示した。
 今後の見通しについては「2023年の当社推計の飼養羽数は前年比92%、1~9月の成鶏用飼料出荷量は前年比93.7%となっているため、22年の鶏卵生産量259万7000トンに当てはめると、23年の鶏卵生産量は239~243万トン㌧くらいではないかと推計している。
 需要面の動向は、22年は国産鶏卵260万トンに対し、家計消費が約130万トン(約50%)、業務用が約78万トン(約30%)、加工用が約50万トン(約20%)、輸出が約3万トン(約1%)とした場合に、相場は結果的に215円でバランスしていた。23年は需要の変化を表すと、家計消費は5%程度悪い状況で、業務用は外食の回復もあって100%をわずかに超えるくらいのペースと見ている。加工用は需要の回復が顕著に遅れていると感じており、鶏卵加工メーカーと会話をすると7割くらいではないかなというところ。輸出は1~10月累計で6割くらいになっているため、それぞれの需要の変化を加味すると合計で92%くらいになり、年間の需要量は239万トンくらいではないかと思っている。
 供給自体は今後、安定的に回復してくるし、HPAIの被害は昨シーズンと比較すると、今現在は大幅に抑制できている。一方、加工メーカーは冷凍卵の在庫を抱えているため、我々も実需者に向けて安定供給を促していくとともに、需要を取り戻すために需要を喚起していくことが必要ではないかと思う。
 24年の稼働羽数が元の水準に戻ってくることになると、少なくとも実力ベースで250~260万トンの生産能力はあるため、仮に需要が239万トンで正しいとすれば、相場はいくらでバランスするのかというところになると思う。当然ながら価格は最終的にはマーケットが決めることになるが、供給過多の状況になると相場水準が下がっていくと予想されるため、12月は相場が下がるという異例の展開になっているが、これについても需要が戻り切ってないところが一つの大きな要因で、全農たまごとしては流通の立場を担うところで需要を喚起していくことが使命だと思っている」などと説明した。
 農林水産省畜産局食肉鶏卵課の鈴木浩幸課長補佐は、令和5年度補正予算に盛り込まれた粉卵の製造施設の整備などを支援する「緊急時鶏卵安定供給対策事業」の内容を紹介した。

鶏鳴新聞

鶏鳴新聞
2024年2月7日

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