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【無断転載禁止】鶏鳴新聞2023年1月17日号   激変環境下でこそ足腰強い国内鶏卵産業構築へ

JA全農たまご㈱
代表取締役社長 小島勝

あけましておめでとうございます。鶏卵関係者の皆様に、謹んで新年のごあいさつを申しあげます。
 激動の令和4年の相場展開を振り返りますと、月を経るごとに生産のひっ迫感が大きく感じられる一年となりました。
 令和4年の初市相場は、量販店をはじめ販売先の休業日程が例年より1~2日多いこと、また滞貨玉による供給過多な状況もあり、東京Mサイズ基準値は140円/㌔㌘でスタートしました。令和4年当初は、鳥インフルエンザの発生は限定的であり、在庫を抱え生産過剰気味で推移し、1月5日から1月24日までは成鶏更新・空舎延長事業の発動もみられました。また、正月明けより全国的に新型コロナウイルスのオミクロン株が猛威を振るい、全国域でまん延防止等重点措置が適用され、2月のピークにおいては、全国で1日の感染者数が10万人を超える状況となりました。
 3月21日に同措置の適用が全面解除されたことで、ようやく需要の回復が見え始めてきました。需要面では、外食業態が徐々にコロナ禍からの回復の芽を出す一方で、生産面では配合飼料をはじめとする様々な原料の値上がりに伴い、生産調整や供給抑制の方向へと進んだこともあり、4月時点で東京Mサイズ基準値の月間平均相場は211円。5月は219円、6月は213円、7月は205円、8月は204円という相場展開が続き、過去5年間の月間平均相場としては2番目に高い水準となりました。
 8月以降は、すべて上伸の展開が続きました。需要面としては、10月から開始した全国旅行支援や「Go To Eat」事業の効果により、観光業の盛り上がりと業務・外食筋の引き合いがみられました。訪日外国人についても、9月以降増加傾向に転じ、日本政府観光局によると10月の訪日客数は推計値で約50万人となっており、コロナ禍前の令和元年との比較では依然20%程度ではあるものの、回復の兆しがみえてきました。
 一方、生産面は波乱の展開となりました。今年度は業界を悩ませる鳥インフルエンザが驚異的な速度で拡大しています。12月16日時点で総発生件数37件、採卵鶏の殺処分羽数557万羽という数字は、過去最速の推移であり、約987万羽が殺処分された令和2年度以上の危機感となっています。
 こうした鳥インフルエンザによる供給減少の影響もあり、東京Mサイズ基準値の月間平均相場は9月223円、10月239円、11月262円で推移しました。最終的に、東京Mサイズ基準値の年間平均相場は215円となり、前年を2円下回る推移となりましたが、結果として令和4年は原料価格高騰・鳥インフルエンザ等の予期できない未曾有の危機に振り回された一年であったといえます。
 今後の需給動向について推測してみます。まず需要面では、人流の活発化がどこまで進み、新たな需要の創出がどこまでできるのか、この2点が鍵を握ると思われます。コロナ前と同等とはならないとしても、国内の人流の回復や業務・外食需要等の回復がみられる状況になると思われます。
 令和4年の鶏卵の家計消費は、10月までの累計で前年比97・7%、令和2年との比較では97・1%と、コロナ禍による巣ごもり需要は落ち着き、内食から外食への回帰がみられています。業務・外食筋も令和4年10月の外食全体の売り上げが前年比114・8%となるなど、行動制限のない土日、祝日を挟む3連休等はコロナ禍前と遜色のないほど、人流の回復が伺えます。また、観光目的の訪日客数の回復によるインバウンド需要にも期待をしています。
 新たな需要の創出に向けては、消費の流行の変化に敏感に対応する必要があります。「ウェルビーイング」「ESG(環境・社会・統治)への意識の高揚」「SDGs」などが、小売り業態のトレンドとしてよく挙げられていますが、今後鶏卵業界においても、商品やサービスの機能だけではなく、こうした付帯される社会的・文化的価値に左右される消費行動に即した商品への注目度が高まると考えられます。また、輸出についても日本産鶏卵の需要の高まりが期待されます。
 一方で、生産面ではどうでしょうか。令和4年は「コスト上昇」「鳥インフルエンザ」の2つの要因があり、さらに10月時点の全国え付け羽数累計が前年比を約6%下回っていることから、供給は抑制されている状況です。特に飼料価格の高騰は想像以上であり、飼料基金の補てんが限界にある現状では、生産意欲の減退がさらに進む可能性があります。
 ただ、不透明な情勢であるからこそ、鶏卵業界が持続可能な産業として発展していくために、消費者に卵のすばらしさをさらに知ってもらい、鶏卵市場を拡大させていくことが、弊社に課せられた重大な使命であると考えています。たまニコ運動や、たまご知識普及会議を通じた新たな取り組みなど、業界団体と連携した鶏卵の消費拡大施策に継続的に参画するとともに、弊社としても、消費者に卵の機能や価値をより身近に感じてもらえるよう、卵に関する情報発信や啓発活動に引き続き積極的に取り組んでいきたいと考えています。
 こうしたことを踏まえ、国内鶏卵産業の足腰の強い体制構築に向けて、業界一丸となって諸課題に取り組む年とする決意を表明し、新年のごあいさつとさせていただきます。(東京都新宿区中落合2-7-1)

鶏鳴新聞

鶏鳴新聞
2023年1月17日

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